issue*12イギリスミュージックシーンを振り返る〜80年代

「男が美しい時代」ニューロマンティックス

[スタンダー・バレー] 80年代初頭のニューロマンティックス(以下ニューロマ)ブームは男が美しいと思える時代だった。右の写真は「Paint Me Down」を発表した頃のスパンダー・バレーのメンバーである。あまりにもこの曲のプロモーションビデオの刺激が強すぎるとのことで本国イギリスでは放送禁止になったほどだ。私はそっちの趣味はないのだが、男の私でも「オ〜ゥ!」と思える一枚じゃないだろうか…

 このブームの立て役者となったのはスティーヴ・ストレンジという男。彼は79年に元リッジ・キッズのラスティ・イーガン(のにちヴィサージへ参加)と共に、「ビリーズ」というディスコをオープンさせる。スティーヴがドアマンを務め、ラスティがDJ、グラスを集めていたのがマリリン、そして常連客では自らもDJやモデルをやっていたボーイ・ジョージなのどがいた。

 その後「ブリッツ」、「ベル」等のディスコやクラブができ、やがてそこに集まる連中の中からバンドを作って活動することになる。これがニューロマの始まりだった。ジョン・フォックス脱退後、元リッジ・キッズのミッジ・ユーロを迎え幻想的な音楽で人気を獲得したウルトラ・ボックス、パイレーツファッションと奇抜なメーキャップでアイドルとなったアダム&ジ・アンツ、スティーヴ率いるヴィサージ、ABC、スパンダーバレー、デュラン・デュラン等のバンドはこのムーブメントから出ていった代表格と言えるだろう。

 90年代にこの頃のような美しさを持ったバンドがいないのはなぜだろう?90年代初頭に人気を博したストーン・ローゼスは「90年代の主役はオーディエンスなんだよ!」と言った。その言葉が示すように80年代はキラキラしたファッションで身を包み派手なアクションで見ている私たちを釘づけにするアーチストが多かったように思う。それが90年代のアーチストはステージというお高い見晴らし台からオーディエンスの目線と同じ高さまで降りてきたように思う。
 そのことによって観客との一体感が増し、観客とアーチストとの絶妙なグルーヴ感を生むことに成功したのではないであろうか?そして、それまでのスターは顔良し、格好良しが大原則だったが、その壁をも90年代はなくしてしまい、どこにでも見かけるお兄ちゃんがボーカルをしていたり、不思議なことに90年代のスターの顔は80年代のスターの顔と違っていた。ローゼスや、マンデーズ等、「マンチェシーン」のバンドのファッションを見ても感じるように、ブカブカなジーンズにスポーティなパーカーやスウェットスタイルという、どこでも手に入るようなファッションに身を包んでいた。もちろんこのファッションが流行になり、90年代のクラブ・シーンのファッションを支えてたのは紛れもなく事実なのだが…80年代のアーチストにはABCのキラキラスーツや、アダム&ジ・アンツのパイレーツファッション等、普段自分ではまねできないスタイルをしたアーチストがいて、観客との距離があり、憧れや、夢を描いていたように思えるのだ。最近80年代が見直しされているのは、そのへんも要因としてあるのでは?ないだろうか。

[ボーイ・ジョージ]

 

NEXT第2期ブリティッシュインヴェイション

issue*12 音楽とファッション-ジャンル論の試み 4 前編

Let's get Pop!-良質の音の庭には花が咲く

〜ゲスト:ボブ佐久間


ファッション論INDEX
BackNumber INDEX