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January 15, 2005

60年代がはるか遠くに思えた瞬間

60年代がはるか遠くに思えた瞬間

1960年代がこんなに遠く感じたことはなかった。「イブラヒムおじさんとコーランの花たち
(原題:Monsieur Ibrahim Et Les Fleurs Du Coran)」
という映画を観たからだ。
原作は、エリック=エマニュエル・シュミットがコーランと実在した祖父の思い出を元に
描いたベストセラー「モモの物語」の映画化だという。1960年代、パリの裏町で暮ら
す13歳のユダヤ人少年モモと、彼のアパルトマンの向かいで小さな食料品店を営むトル
コ移民の老人イブラヒムとの友情物語。

コスチュームを担当したカトリーヌ・ブシャール(catherine bouchard)が、60年代の
パリの裏町の娼婦や庶民の華やかなワンピースやスカートスタイルを再現していたのが印
象的だ。ユダヤ教とイスラム教という戦争にまで発展している宗教問題、人種問題を手品
のようにいとも簡単に解決した映画でもある。深い観察力と洞察力が欠けた現代人への警
鐘のような内容だ。白黒をはっきりつけたがり、善玉と悪玉の二つに区別したがる傾向に
ある現在、実は、グレーな部分が大半の人生。

わずか40年たらずで、人間が変化してしまった。見えない恐怖に慄き、見えない未来に
困惑し、見えない隣人を疎外している。わずか40年たらずで、人を愛することが下手に
なった。わずか40年たらずで、幻想や占いや私欲にまみれていた。深い観察力と洞察力
を失いかけている現在は、うたかたに似ている。60年代がこんなに遠く感じたことはな
かった。失いかけているもの、それは愛するということ。

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