歌詞の中の高級ブランド名が
ニューズウィーク誌(9月4日号)に載った「ブランド品はラップで売れ」という記事は面白かった。ヒップホップなどの曲の中でバーバリー、プラダ、ルイ・ヴィトンなどが登場すると若い世代の購買が急増するという話だ。高級ブランドの関係者もスラム街に対する偏見を捨てなければならないほど、影響が大きくなっている。音楽専門テレビ局のMTVとBETで放映される音楽ビデオによって、高級ブランドの売上が跳ね上がる。宣伝費も派生しない不思議な関係が成立している。日本でも浜崎あゆみなど人気歌手が、身に付ける洋服やグッズが売れるのだから、不思議はないが、歌詞の中の高級ブランド名が続々と登場することは、あまりない。
日本のラップ・シーン
日本のラップ・シーンで、リップスライムのような人気グループ以外にも注目に値することが起こっている。TBS放送の「学校へ行こう!」にB-RAPハイスクールというコーナーがある。Co.慶應や軟式globeなど、人気のある個人、グループもいる。お笑い系だが、B系にありがちなだぼだぼパンツにビッグトレーナーというスタイルではない。Co.慶應は、歴史の学習モノ、知識モノを得意に一人で歌い、軟式globeは男女のユニットでナンセンスモノを得意にしている。元々、日本のラップは、外見は同じでも、内容や思想が違う。反社会的・反体制的メッセージ性の強いアメリカのそれとは、まったく違う。お笑いというJapan-RAPの新しい方向性が見えてきたように思う。ブランド大好きな日本だから、歌詞の中に高級ブランド名を散りばめる連中が、現れそうな気もする。そういえば、名プロデューサーつんくもシャ乱Qのデビュー当初、金ピカ・スタイルで鮮烈に登場した。
言葉を重視
ラップ人気は、ベストセラーにもなった「声に出して読みたい日本語」など、日本語ブームの関心の強さと微妙に関連しているように思えて仕方ない。ラップは、歌うというより語りに近いくらいに言葉を重視する。普段使っている言葉を多用する。若者自身の自然体な言葉だ。たわいのない日常生活や恋愛が、詩になる。時には、即興もある。ジャズなどでは、即興的なアドリブが使われる。そのライブ感が、共感や価値を生む。ひとつとして、同じシーンがない。ライブとは、状況の違いによって、呼吸をしているように演奏する側も聴き手であるお客側も変わること。また、音楽ビデオの普及などで、CDだけでは売れなくなると思われる。
公正に見分けることが任務
「今年1―7月のレコード生産は業界全体で前年同期比16%減となっており、本格的な違法コピー対策が不可欠な情勢」とメディアが報じていたが、違法コピーだけの問題だろうか。デフレ時代にCDやDVDなどを格安にするなどの努力も、必要ではないのだろうか。また、買ってまで聞きたい曲がないのも事実で、子供グループがTVを占拠し、幼稚な歌をいつまでも聞かされる世の中が異常だ。その異常に気づかないメディアも業界もおかしい。ファッションも高級ブランドだけでなく、創造性の高いものを選ぶことを忘れてはならない。すべてが偏りがちな時代、メディアだけは公正に見分けることが任務だ。刹那的に動物的に時流を追うことを止めれば、ユーザーも豊かな生活を味わえると思うのだが。
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2002/9/05