アンファッショナブル・ファッション日記 2008年7月

No.7 (2008年7月)

7月某日


神戸古書会館の古本市。小さな民家を利用した会館。戦前の大判スタイルブックを見つけた。3500円。ちょっと高いけど買う。あとは室生犀星の着物について書かれているエッセイが見つかった。モデルは奥さんらしい。父に教えてもらう。ああ、またこうやって紙類がどんどん増えていくなあと思いながら。


7月某日


またまた調子乗りで引き受けてしまった。京大人文科学研究所主催の講演のコメンテータ。講演者はロンドン大学の博士課程にいる、日本のファッションを研究しているフィロメナさん。彼女から原稿が送られてくる。一緒にゴシックロリータの市場調査に出たり、わたしの英文論文の訳を手伝ってもらったこともあり。チャーミングな女性。


7月某日


最近ラジオがマイブーム。よく聞いている。パソコンの調子が悪くiTunesが使えなくなっているのもその理由。偶然に音楽と出会うことが心地よい。今日は渋谷陽一の番組「ワールドロックナウ」を聞く。Babyshamblesというかっこいいロックバンドを知る。The Libertinesのヴォーカルが作ったユニットらしい。わたしの永遠のプリンスPaul Wellerの新譜も出たようだ。


7月某日


水墨画でカエルばかり書いている友人の個展があり、講演コメンテータの準備に追われてはいるが出かける。今回色がついた印象的な作品があった。夜明けのような夕暮れのような薄紫が解けていくような作品。もちろんカエルがそこにいる。作品数がずいぶん増えて新作を書き下ろしたようだ。バリ島で録音したというカエルの音を採集したCDも彼女の水墨画のジャケット付きで売られていた。しばしいい息抜きになった。


7月某日


御殿場に住む友人が大阪に来るという。わたしは忙しくて大阪に出られなくて神戸まで来てもらい会う。明石焼(玉子焼ともいう)をごちそうする。三宮にある名店たちばなにて。ふわふわのたまごたっぷりの蛸焼きが明石焼。薄味のお出汁につけて食べる。中華街などぶらぶらして、バリスタのいるカフェで2時間くらいおしゃべりする。可愛いいクマが描かれたカプチーノは味も本格的。


7月某日


なんとかコメンテータをこなす。講演タイトルは「ファッションコンタクトゾーンとしての原宿」。英文の原稿を読解するのに時間がかかった。わたしは10年以上前に雑誌「STREET」のことを考察していたのだが、彼女が今回扱う「FRUiTs」や「Tune」の母体の雑誌なので、昔の論文をひっぱりだしてきてコメントを作った。久しぶりにお会いできた人たちと話ができてうれしかった。京都造形芸術大学の成実さん、京都服飾文化研究財団の石関くん、お二人とも院生時代以来だからとても懐かしい。編集者の米谷さん、龍谷大の院生ジロウくんも聞きに来てくれる。


7月某日


前期授業が終わる。漫画家都あきこさんの出版記念会があるのに誘われわたしもお邪魔する。幻冬舎から著作が二冊出ている神戸の作家さん。ヨガをやられているからか凄くプロポーションがいい。内面から醸し出す美しさにしばし見とれる。ずっとお酒飲んでなかったがひさしぶりにワインを飲む。隣に座ったイラストレータの男性がiPod Touchを持っていて触らせてもらう。欲しいなあ。


7月某日


ちょうど一年前にやった「詩と服の展覧会」の会場だった神戸のギャラリーAoへ行く。一年ぶり。造形作品が展示されており、作家さんとおしゃべりしているとギャラリーのオーナー三谷さんがあらわれる。三谷さんは60代の女性で、趣味が多彩、久しぶりにお会いすると髪型が日本人形みたいになっていて可愛かった。あれから一年、自分は何をしてきたのだろう。あまり考えると落ち込みそうだなあ。


7月某日


月末で書類の締め切り真っ最中。数少ない詩人の友人が神戸に来るという。夕方ならたぶん上がってると思うと答えて必死のパッチで作成する。だいたい出来上がってメール送信、と思っていると、パソコンがかたまってフリーズする。焦る。結局友人に待ってもらいつつ、なかなか動かず、書類送れず、結局会えず、友人は大阪へ帰って行った。暑いところ来てくれてたのに会えなくて申し訳なかった。どら焼きをお土産に買って来てくれたらしいのに。残念。


アンファッショナブル・ファッション日記 2008年8月

No.7 (2008年8月)

8月某日


研究資料を買ったり、よく出かける古本屋さんでのイベント「パブリッシュゴッコ」に出かける。行ったら知った顔が二人も来ていた。主催者で、ドグマ出版という漫画雑誌を作っているインディペンデントな香山哲さんにはじめて会う。「ギターマガジン」でも連載されている。わたしの詩集も一冊売れてうれしかった。大盛況で店内のクーラーがきかず蒸し風呂状態。おのおのが自分のミニコミや作品を品評し合う。楽しかった。


8月某日


久しぶりに妹に会う。正しくは妹の飼っている犬に。わたしのことを恋人だと思っている。とても可愛がっているのだ。神戸は塩屋のシーホースのチーズケーキとプリンを買っていく。妹がたいそう美味いと感激している。シーホースは材料にこだわった自然派のスイーツ店です。ああわたしも犬が飼いたい!


8月某日


パソコンがとうとう動かなくなった。起動さえできないのだ。困った。仕事ができない。月末締め切りの論文があるのに。半泣きになり、呆然としてしまう。いかに自分がパソコンと共に生活していたかをあらためて知らされる。お盆ということもあり、パソコン放り出し、実家に帰ることにする。実家に帰ると、リビングには新しいテレビが。買ったばかりだという。競馬をはじめスポーツ観戦好きの母がうれしそうにオリンピックを見ている。でかいのにうすい、もちろんデジタル放送なんだそうだ。水泳はほとんどの選手が例のレーザーレーサー水着を着ているの。まるでオリンピックのユニフォームみたい?!


8月某日


仕事ができる喫茶店を探していたら、友人から電話があり、論文タイトルの英訳をして欲しいと言われる。題名聞くとめちゃくちゃ長い。喫茶店を見つけて入り、暑いけど熱い紅茶飲みながら、せっせと仕事する。自分の仕事が一段落ついてから、携帯に入ってる辞書を使って友人の頼まれごとをさっさと仕上げる。お盆休みで町はにぎわっているが、わたしは仕事。


8月某日


盂蘭盆会。四天王寺の万灯供養に夕方から出かける。はじめて。聖徳太子ゆかりの、大阪では本格的な先祖供養をやってくれることで有名なお寺。夏の夕刻、たくさんのろうそくの灯りでなんだかとても幻想的である。暑さはやわらぎ、風が強くて炎が揺れている。亀のいる池でお札を洗い流す。そこはこの世とあの世をつなぐ川なのだ。生きていることに感謝し、しばしご先祖さまに思いを馳せて手を合わす。


8月某日


神戸に戻り、勇気を出してアップルのサポートセンターに電話する。1時間くらいかかってパソコン修理に挑む。結局OSを再インストールせねばならないらしい。おまけにわたしの場合は上書きができない状態らしく、4年分のデータがすべて削除されてしまった。3時間以上経ってやっとパソコンが動きだした。落ち込んでばかりじゃいられない。気分一新と行こう。リムーバルディスクにかろうじて入れていたデータなどを地道に移す。


8月某日


ロンドン、香港でもすでに開催された、ヴィヴィアンウェストウッドの写真展が六本木のギャラリーで開催されている。当初は10日までだったのに24日までに会期が延びた。行きたい、と思うも、論文はできあがってないし、入試業務などもあるし、あきらめる。この写真展は、大きさが90X64cmで重さが25kg、価格が36万7500円という写真集から、現物を30点ほど展示するもの。ケイトモスやティムバートンなど有名人がウェストウッドの衣装を着て大きなポートレートの被写体になっているという。


8月某日


繊維メーカー時代の同僚で、仲の良かったスタイリストさんの新居に行く。同じ部署にいた人間が集まり、ちょっとしたお祝い会になる。大阪と京都のあいだにある山深い土地。中古マンションを買い、内装リフォームされた。こだわりのドアノブ、フランスから取り寄せた板。スペインかポルトガル、南フランスみたいな、開放感のある雰囲気で、南向きのリビングからは緑いっぱい、山が見えるのだ。壁は体に優しいという真っ白の塗料が、床は丁寧に磨かれていい色が出ている。風が気持ちよくて、ワインが進む。ヴィシソワーズにはじまり、手作りのオードブル、デザートなどでおなかいっぱい。まさに作品のような家にただただ感動する。

8月某日

女子プロレスとポルノグラフィーをテーマにした論文脱稿。東京へ出張する。神保町の古書街で研究資料を買い漁る。ヴィヴィアンウェストウッド青山店へ行き、公開されたばかりの映画「Sex and The City」に登場するというマリエを見る。店内に飾ってあった、例のでっかいOPUSの写真集を見つけて驚嘆。先日展覧会に行けなくて残念だったとショップの方に話すと、一枚ずつ重い頁をめくって見せてくださる。感謝。浅草橋のパラボリカビスで堀佳子さんの人形展を見る。ゴチックなスタイリング、着物や黒いドレスが妖しくも美しかった。


アンファッショナブル・ファッション日記 2008年9月

No.7 (2008年9月)

9月某日


東京最終日。帰りにもう一度神保町へ。買い残した本などとあわせて一つの書店でまとめて宅急便してもらう。新幹線に乗るまで時間ができたので渋谷まで出て、ケンローチの新作「この自由な世界で」を見て帰ることにする。まだ関西ではやってなかったので。ロンドンが舞台、移民の労働問題がテーマの映画。シリアスだがユーモアも見え隠れしてケンローチ節を十分味わうことができる。東急百貨店の地下で100円引きになっていたお弁当を買い、700系のぞみで神戸へ帰る。


9月某日


金曜夜。高校時代の友人と久しぶりに大阪で会う。彼女は仕事で東京へ来ないかという誘いが来ているという。東京行くにはぎりぎりの年齢かなあなどと話をする。ナポリピッツアと赤ワイン。最後は北新地で飲み直し。働く独身女の夜は悩ましくて長い。


9月某日


9月最初の日曜日。友人から連絡があり、夕方待ち合わせて「絵で読む宮沢賢治展」へ行く。宮沢賢治は絵も描く。水彩画がきれいだった。草野心平の雑誌『銅羅』の現物や、味のある文字で書かれた直筆の手紙など、眉唾もの。なかでも亡くなる前日に書いたという絶筆二句は凄い。本展の目玉である「雨ニモマケズ」手帳の現物もある。詩以外にも童話が有名な宮沢賢治。荒井良二など多くの画家による挿絵も展示。絵本もたくさん販売されていて、大人も熱心に読んでいる。


9月某日


友人とIKEAに行く。大阪店は先月できたばかり。安くてセンスのいい北欧もの、といえば最近東京に上陸した「H&M」が話題。入場制限しており、並ばなければ入れない。三連休最終日ということもあり、人でいっぱい。なんとか店内に入ると、まずは二階のショールームに皆誘導される。入場者を整理するためだが、混んでいる美術館さながら。ぞろぞろと連なって歩きながら、ベッドや本棚など商品を展示しながらイメージされ作られた部屋を巡る。スウェーデン料理が楽しめるレストランへ行く。サーモンマリネを見つけたので、セルフで注げる白ワインのグラスを明るい時間から楽しんだ。ファブリックなど可愛いし、全体的に安いと思うが、人疲れしてしまい、結局何も買わなかった。


9月某日


BSで放送されていた「東京ガールズコレクション」を見る。たっぷり二時間だが、飽きない。芸能タレントとしても活躍しているモデル達が登場すると、観客の女の子たちが歓声とともに手を振って、ショーを盛り上げる共演者さながらだ。コンサートホールのような会場の熱気。いわゆるコレクションと違うのは、今シーズン、すぐ今からのトレンドがショーアップされていること。秋冬で流行するチェックのヴァリエーションがおもしろい。セレクトショップのステージなどもあり、興味深い内容。


9月某日


仕事から帰ってきて、軽く夕食を済ませ、渋谷毅さんと二階堂和美さんのライブに行く。渋谷さんのピアノを神戸で生で聞くのははじめてでわくわくする。以前渋谷さんのピアノのことを、「いつ弾きはじめたのだろうか、そして、いつのまにか終わっている、ピアニスト」と書いたことがある。外部に自然となじんでいく音なのだ。演奏は渋谷さんのソロでスタート、二階堂さんが登場してからは女の子らしいかんじの曲が続き、1ステージ終了。後半は、二階堂さんの生ギター炸裂、ブルージーでフォーキーな感じもする歌と、渋谷さんのジャジーなピアノがぽんぽんと一緒に弾けて遊ぶかんじ。東京で一度ラーメンとビールをご一緒したことがある、大好きなピアニスト。


9月某日


神戸の悪友と久しぶりに会う。バルへ行き、赤ワインとオリーブで、お互いの近況報告。二軒目の焼鳥屋からは、書店で働くセーラちゃん(男です)が登場。彼は女装を趣味にしており、何かコスメをプレゼントしようということで、悪友と一緒にドラッグストアへ。ブルジョワの新しいミニリップスティックのシリーズ。とても可愛い。


9月某日


三宮でチェックのワンピースとフォークロア調のチュニックを買う。このあいだ見た「東京ガールズコレクション」の影響か、フリンジ付きのもこもこブーツまで欲しくなる。ガールズではもはやなくても、ガールズテイストは気になり、取り入れたいもんだ。ワンピースはサテン布にグレーとピンクの大柄のチェック。あいまいで微妙な色合いが気に入る。


9月某日


締め切り間近の書類が二つ、なんとか仕上げて奈良へ行く。一年越しで作製中の押し絵を仕上げるためだ。押し絵とは布で描いていく絵のようなもの。着物のことをいつも教えてもらっている昔なじみのおばさんが先生だ。お彼岸ということもあり、大好きな京菓子仙太郎のぼた餅を買っていく。押し絵は、干支絵巻のようなものだが、十二支を作って放りっぱなしにしたままだった。銀の絹の布の上に絵柄を貼付けていく。年末12月から飾って、年があけてしばらくして仕舞うとのこと。来年は牛かあ。一年があっという間で早い。