No.3 (2007年7月)
7月某日 everlasting No
イギリスは19世紀の評論家トーマス・カーライルの文章のタイトル。大学時代の授業で出逢ったが、それ以来思い出しては何度も読んでいる。7月末にやる展覧会にも大きく関係しているのだ。
教えてもらった人はもう亡くなってしまった。キャンパスが山のなかにあり、建物そのものが教会のようで、わたしたちは建物内をナースシューズで歩かねばならなかった。フェミニンなファッションが流行していた時代、神戸ファッションを牽引しているといわれていた女子大生たちが、きらびやかなスーツにやぼったい靴など合わせたいわけがない。
それで、ナースシューズをはかないで、ハイヒールでカツカツあるく学生が多かったが、その音を聞く度に、その評論家をわたしに教えてくれた先生は、追いかけて、掴まえて説教するので有名だった。いつかもう一度授業を聞きたいと卒業してからずっと思っていた。彼女こそ、いつまでもあきらめず、No!と叫んでいた人だった。
ナースシューズは通気性もよく適度なヒールがあって歩きやすい。最近踵部分にストラップがついた可愛いデザインのものを見つけた。色違いで二色。高機能素材でも、ファッション性もおさえている。そんな欲張りな望みはかなうのだ。まだ母校では上履きをはいているのだろうか。こんなナースシューズならきっと脱がなくてもよかっただろう。
7月某日 サバイバルライスサラダ
学期の終わり。月末の催事。慌ただしい毎日。
外食や出来合いのものばかりでは飽きてくる。
とにかく何か食べなければ。夜中に作ってみた。
ベーコンをとにかく切り、フライパンにのせ、火をいれる。
しめじとマッシュルームをざくっと切ってフライパンへ。
ほうれん草をざくっと切ってフライパンへ。
茄子を縦にざくっと切ってフライパンへ。
トマトをざくざくっと切ってフライパンへ。
少しお水を入れてしばらく火にかける。
洗っておいたお米をすぐ加える、ばらばらに。
それで火をかけ、調節し、できあがったら、しばらく蒸して、
食べる直前に、薄い薄いスライスチーズをのせておく。
ポイントは唐辛子と胡椒、塩はいいやつを少しだけいれる。
洗っておいたベビーリーフをたっぷりお皿に盛りつけて
イタリアンドレッシングを少しかけ、リゾットと一緒に食べる。
7月某日 Au revoir mon pere
いまの家に暮らして七年経過した
管理人さんが大好きだった
朝出掛けるとき 「行ってきます!」
朝帰ってきたら 「おかえりなさい」
午前中しかおられなかったけれど
ある日の午後
仕事を終えた管理人さんを見かけたことがある
中折れ帽に 涼しげで品のいい すらっとしたスーツ姿
これぞ神戸のジェントルマン!
やさしい人が かっこいい人に変わってた
何も告げずにいなくなってしまった
やさしくて かっこいいひとだった
さよなら わたしの神戸のおとうさん!
7月某日 詩と服を展く
初日。当日山本さんの音楽がぎりぎりで届いたけど、わたしは前期試験で職場に午後は出なければならない。パソコンで再生したら、聞こえず、どないしよう、って、スピーカーを前日に搬入してたから音がしなかったことに気付いたのは、初日が終わる頃、、、。どんくさいわたしが、1時間でうまく出力できるわけなく、わたしがいないときに来てくださった皆さんにはヘッドフォンでしか聴けず、申し訳なかった。
NO展入場者の方に配布した、わかりにくい本展の言い訳として書いたガリ版冊子を、無理いって短期間で作ってくれた安藤さんがみえていたようで、お会いできず、とても残念。「きものであそぼ」がシリーズ化され好評の遠藤さんは、お友達と一緒に美しい夏の着物で来てくださってたよう。写真見て、実物見られず地団駄踏む。わたしの作品のポストカードをデザインしてくれた石井さん、忙しいのに無理言ってしまい、お礼もできないまま今に至っている。北園克衛展で初めてお会いして以来、詩誌を送ってくださる小西さんにもお会いできなかった。職場からギャラリーに戻ってきたら、東京の古本屋で知り合った中田さんが、たくさんのお土産を抱えて入って来られる。わたしのタッグパートナー平松さん、仕事なのかオフなのか何度も来場くださった。かわいいブーケ持ってきてくれた鼻歌シンガーのりうしくん、京都から重いカメラを抱え撮影に来てくれた友人星野さん、早く写真見せてね。
7月某日 グレコローマンな女体
二日目。NO展にはいろんな隠しテーマがあり、わたしにとっては、服を着たままお風呂に入っていることをイメージしていた。そのために浴衣を着ようと5日分準備していたが、初日はさすがに時間なかったので、この日は母と一緒に去年作った浴衣を着た。しかし着付けがうまくいかずすぐぐだぐだに。
会場に行くと待っていたのは神戸で伝説の本屋を営んでいた川辺さんご夫妻、その微笑みに救われる、着物を褒めてくれて。京都から出張して来てくれたのだと思ったらオフで、ユニークなお友達と来てくれた編集者の米谷さん、かわいいTシャツ着ておられた。神戸でしか買えないイギリスの紅茶があり、そのお店を営んでいる小半田さんご夫妻も仕事の合間をぬけて。そして押絵を出してくれた渋谷さんが母と現れ、みっともないから浴衣を脱げというので、なくなったガリ版冊子を取りに行くこと兼ねて家に帰りたい、「あなたが主役よ」と叫ぶギャラリーの三谷さんの声を背に、パーティ準備が始まっているのに、妹の車で抜け出す。戻ったらロンドンで知り合った可南子さんと治郎くんが来てくれている。二人は可愛くてお洒落。知識欲旺盛な治郎くんは、服の作品に背負わせたカーライルの『衣裳哲學』に興味を示し、本と一緒に写真を撮ってた。しばらくしてプロレス本を一緒に書かせてもらったダンディな岡村さんが、同じくダンディな戸田さんもみえる。戸田さんは、前夜ぎりぎりで絵を搬入され、そのときにも展示の最終仕上げで大変お世話になったが、この日は照明のアイデアもいただいた頼りになる紳士。友達が続々登場、子供と旦那連れてきてくれたロコ、ワイン持ってきてくれたのにすぐ帰ってしまった吉成さん、タイガース狂のみっちゃん、タイガース卒業したもりごん、敬虔なカトリックのゆうちゃんなどなど。それから仕事帰りに近くのギャラリーで働いてる川瀬さん、以前素敵な古着物屋やっておられた(わたしの古着物はほとんどここのもの)菫さん、この日の衣裳同様に美しい青を描く三沢さん、同じく素敵なお召し物の龍首さん、パーティ佳境でロリータファッションのmarieさんと彼女のキュートな友達が現れる。「パーティなんてわたしにはどうでもいい!」とおたけんでしまったことを申し訳なくおもう。楽しかったし、おいしかった。芳名録にはないけど、作られた作品の花のように麗しく着飾られた大谷さんもお友達や先生と共に加わっていてくださり、妹は楽しみにしてくれてたのに言葉のワークショップにも参加できず、夜遅くまでパーティのホステスに徹してくれた。
7月某日 命の瞬(またた)き
三日目。日曜日であまり人は来ないだろうと思ってのんびりしていた。
鞄作家の七重さんが手作りの花を持ってやってきてくれると、いつでもどこでも彼女をエスコートしている(イメージ)中山先生が、現れる。二人は偶然にこのタイミングで来られたようだ。中山先生はギャラリーとカフェを併設している洋裁学校の校長先生だが、わたしにはお坊さんのような存在で本展にはぴったり。それからしばらくして、長い間(オンラインのこの場所で!)おつきあいさせてもらってきた「週刊ファッション情報」の館長と編集のmariさんが!館長はなんか思っていたのと違う、おもろいしめちゃくちゃかわいい人じゃないか、mariさんはチャーミングなストラップの靴を履いていて、大好きな人だったがもっと好きになった(わたしになんだか似ている)。今ここのが一番美味しいと思ってるカレー屋さんをやっている佐野坂さんご夫妻が思いのほか企画を楽しんでくださり、しばらくしてロンドンで知り合ったしほさんが現れる。彼女とはイギリスの方が断然売れてる日本人のバンドのライブに行ったときに、アダムという男前イギリス人介して仲良くなっていた。アダムもそういえば応援メールを何度も送ってきてくれた。本屋の娘さんリカちゃんとは久しぶり、神戸でブックカフェやってて準備段階から手伝ってもらっていた池田さん、初対面とは思えないほど意気投合した田原さん、近くでギャラリーやっておられるらしい所さん親子、終了時間が過ぎた頃、突然の雷雨。帰り道、鳩が死んでいた。
NO展の隠しテーマに、「生と死」があり、まだあたたかい鳩を植え込みに埋めることにしたが、その儀式に田原さんを巻き込んでしまい、大変申し訳なかった。
7月某日 はすの葉にいるカタツムリ
四日目。(これ全部読む人はいないと思うのだけれど、最後まで書こう。わたしとゆっくりお話しできず顔が浮かんでこない人、記帳されなかった人はご紹介できていない)最後の二日間、月曜と火曜で有休を取った。
モーツァルト喫茶の店長曽根さんが現れたが、作品まったく見てくれない。まあいいかと思ってたら、曽根さんの知り合いらしい画家の井上さんが来られ(パイプが似合いそう)、二人は偶然会ったらしく、いつまでも話しこんでいた。わたしのマイナーな朗読会にも来てくださっていた川崎さんが、図書館で働いている本好きの琴子さんと大阪でブックカフェやっている幸田さんが一緒に来てくださる(幸田さんの持ってきてくれた青いバラは枯れても美しいのでまだ家に飾ってる)。うらやましいほどのセンスにあふれる美容院やっておられる野崎さんご夫妻、一緒に来てくれた息子さんが本展を楽しんでくださり、木目込みのカタツムリの写真を撮って自分で言葉を書いてくれ、かわいくてかわいくて抱きしめたかったです。パリでファッション研究やってる高馬さんとお姉さんみたいなお母様が短い日本滞在のなか来てくださり、わたしが作ったCDの布ケースが欲しいと言ってくださった神野さん、値段をなかなか言わないでもったいぶっていたら、後日ギャラリーに素敵な琉球帯を持ってこられ、結局材料持参でオーダー頂いた(早いとこ作ります)。小説家の松野さん、待ち合わせしていた方がいらしたらしいのに現れないままで、アンティーク着物とジェーンマープルが似合う大崎さん、苔玉作家の井上さんとは鉄と花についていつまでも語り合いたかった。終了間際に電話をもらって声でわかったのだけれど「無理です、明日もやってますので」と冷たく言って、遠くから来られてるのにちょっと意地悪してしまった漫画家の森元さんはわたしの好物の桃を持参くださり、ギャラリーを閉めてから仕事帰りのタッグパートナーと落ち合い、三人でカレー屋さんに行く。
7月某日 裸体こそ衣裳
最終日、今日は浴衣にしなければ、夏以外大丈夫と言われていた黒い半幅帯を、この真夏に敢えて身に付けてみる。20年くらい着ている浴衣だが、ものがいいので、ぜんぜんくずれない。着付けはこの日もうまくいってないが、帯締めにしたのが服の作品に使っていらなくなったツーピースのベルト、バックルがちょうど帯留めみたいになる。
四日間とも慌ただしかったので、最終日は受付を誰かに頼みたいなと思っていて、当てにしてたけど結局連絡しそこねた友人ミユキング(漫画描き)が、会場にいた。え、ミユキング、受付してくれるん?と言うと、彼女は、はあ?みたいな顔をしている。戸田さんが奥様と娘さん、そしてもう亡くなられてしまった版画家山本六三さんの奥様と娘さんを連れてきてくださり、すでにギャラリーにいた。わたしがいないほうがいいに決まってると思う。説明なんて本当はいらない。しかし、わたしを待っていらしたようで、申し訳なかった。東京のおかしな骨董屋でわたしが買った山本六三さんの作品のことなどをしゃべる。しほさんがハーフのかわいい娘さん連れて再度来てくれ、カレー屋さんご夫妻も三度目のご来場で、なんともうれしく。しばらくすると、東京からヤリタさんがいらしてくださり、藤本由紀夫さんの展覧会と掛け持ちで日帰りだという。大学時代の恩師、まさに恩いっぱい、テーマが特殊でゼミをたらいまわしにされ、図書館で孤独に本を読んでいたわたしにとっての支えだった高島先生が、大谷さんの花とわたしの服がとても似ていると仰り、いい批評をたくさんくれた。神戸の老舗書店の田中さんが、ギャラリーで制服姿というのが妙になまめかしく、シックな花を持ってきてくださり、編集者の高橋さんがすぐにいらしてお二人は顔なじみとのこと、高橋さんはわたしが十代で影響受けてた由良君美の言語学の本を編集されたという事実を知り驚いていると、彼の友達(わたしの父)が偶然にしてあらわれ、二人はギャラリーをすっかり古本カフェにしてしまった。しばらくすると、タクシー待たせてると言いながら、小説家の島先生が来てくださり、アボリジニの楽器(名前がおぼえられない)を演奏する伯山さんがわたしの出した課題(言葉のワークショップ)に実に真剣に取り組んでくださり、ギャラリーのオーナーのお知り合いで演奏もしてくださった。わたし好みのお庭の草花を持ってきてくださった豊岡さんが「詩の仕立屋さん」(半年間やってた新聞の連載)がおもしろいと言って読み込んでおられ、そしてわたしのタッグパートナーがまた現れて、NO展の打ち上げしてくれるというのだが、ライブツアーから戻られたばかりの山本さんから電話が入り、「いつまでも待ちます」とわたしは答えて、宴を放ったまま、日が暮れかかった頃、最終のご案内をするのだった。わたしが準備で何度もくじけそうになったときの励みにしていたヤクザ漫画を山本さんも持っておられるのを知る。
NO展の最後のテーマ:「プロって何?」