No.3 (2007年8月)
8月某日 笑えぬ液晶
すっかりテレビを見ない生活を送っている。TVチューナーを買ったけれど、わたしのOSはOSX 10.39だからか、10.4対応のそれでは見れないようで、残念。テレビがなくても案外困らないことに気付く、というのは嘘で、ニュースはネットでチェックできるとして、関西人なのでお笑いが観られないのが至極辛い。毎日のように地元では色々とやってるのだ。笑えない液晶をぼーっと眺めている。
実家に帰った際、久しぶりのテレビで、グラシェラ・スサーナを見た。「22年ぶりのNHKホールです」と司会者は興奮気味な風で紹介、しかし、一曲しか歌わせないなんて、ひどいなあ。一緒に見ていた父と、スサーナがいかに素晴らしいかを語り合う。久しぶりにその歌姫の声を聞きたい、とレコードプレイヤーにつなげ、別の音楽を。「アドロ・サバの女王」をかけるが、ところどころ、ぶつぶつと音が途切れる。
8月某日 女神の坂道
8月は仕事が目白押し。授業がないので時間に余裕ができるけれど、それを見越しての締め切り群。
NO展では不思議なことがたくさん起こった。そんな空間にまどろんで詩でもゆっくり書きたいところだったが、二日かけて一人で台車を使って搬出。擦り傷、切り傷、ねんざはないけど、打ち身、肩こり、筋肉痛がひどい。神戸の坂道をとにかくなめていた。下りがかなりきつい。108枚の服を着たボディはとりわけ重い。
朝から電話がなる。「あー、寝てた?」という友人の声で目が覚めて、「いつも、起きてる時間やからだいじょうぶ」といいながら、半分寝ているうちに、段取りよく、仕事の催促。わたしが社長ならあなたを必ず編集長として雇うだろう。頭が完全に起きたと思ったら、書くもん増えてるし!?
「明日からしばらくお盆休みください」と書いて、ぱっぱと処理してファイルをメールで送る。パソコン熱ではないほんとの暑い夏を感じに行きたいのだ。
しかし、「盆休みがいつまでかわからないので、不安ですが…」と、すぐに返信のメールが来て、書き直し指示が出た。明日から、という、自分へ立てた約束のため、必死のパッチでリライト、我ながら、なかなかやるなあ、とおもう。休みたいから。
これは「映画でわかるイギリス文化入門」という本に入り、秋に出る予定。
8月某日 黒い蝶のような
いい匂いのする虫よけスプレー、タオルを首に巻き込んで、わたしの夏の恒例行事である京都の古本市へ出掛ける。最近浴衣のことをいろいろと調べている。結局入浴のことを知らないといけないので、お風呂の歴史なんかも読んでいる。これがとてもおもしろい。
しかし古い本は高い。江戸中期の吉原遊郭の版画が入ってる雑誌(和綴じ)を買うが、そのなかにあった平安期の甲冑の研究論考なんかも興味深い。お風呂というと、やはりエロティックな言説がつきまとい、おかしな本も買ってしまった。
一緒におつきあい頂いた方は昆虫博士さながらで、境内の杜にいた黒い蝶みたいな虫のことを教えてもらう。古本市の会場は歴史のある神社だが、わたしはこの古本市で決まって体中蚊の餌食になり、その痒みはものすごいので本をちゃんと見られないのが常だった。ここの蚊も古代から生きてるから、と言われて納得する。
8月某日 夏の祈り
わたしの愛犬、この猛暑でばてているらしく、昨日は点滴してもらって、病院に一泊したらしい。元気になることをただ祈るのみ。心配でいてもたってもいられない。
目下校正地獄、床に寝そべり、赤ペンをかりかりやっていたところ。ここが大阪なら、ペンを持つ手を舐めにきてくれるのになあ、と思い出していたところだった。
よりによって明日から出張せねばならんのに。なんでもっと早く知らせてくれへんのかなあ!と怒りになる。
わたしがややこしいことをしたからか、展覧会が終わってから家族がばたばたと倒れていく。すぐに妹が、そして母、続いて父と高熱にうなされ、点滴騒ぎ。あんただけが元気や、と言われる。わたしの毒が犬にまで回ってしまった。
8月某日 海の首飾り
つい最近も、搬出の手伝いがてら、で、駆け込み、みたいなことで、NO展でも作品出してもらった佐藤さんの個展、ワルツの解体。漂着物のかけらと漁師網をもらい、首飾りを作ったら評判がよく、気に入ってずっとつけている。本日も、搬入の手伝いがてら、で、侵入、漫画描いている友人の個展「チコとフランシス展」が神戸の古本屋ではじまるのだ。お菓子作りの好きな女の子とギターを弾くのが好きな男の子の新作漫画の発表あり。「おしゃれ漫画」らしいが、かなり壊れてて可愛い世界が炸裂。天井からはラムネがついたリボンが白滝のようにぶらさがり、自作のTシャツやトートバッグも吊られている。
わたしはまだ一節分しか書いてない研究論文に戻らねば。締めきりは…、今日だった。