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アンファッショナブル・ファッション日記 2008年5月

No.6 (2008年5月)

5月某日 インテリアとしての本


大阪梅田にあったナビオ阪急というファッションビルが阪急メンズ館として改装され新しくオープンしている。全館が紳士物を扱う。フロアによってターゲットを設定しており、カジュアルから伝統的なスーツまで、年齢を問わず利用できる品揃え。個性的なステーショナリーが集まるコーナーもあったり、なかなか楽しめる。わたしは本のコーナーが一風変わってていいという噂を聞いていて、ゴールデンウィークで出掛ける。

スペースは大きくないがカフェも併設されていてお洒落なセレクトショップ風だ。古本も入り交じり、本は丁寧に選ばれている。アートや哲学などをはじめ、ファッション、という棚もあり、なかなかにくい品揃え。けれども、この本棚は半年後、一年後はどうなってるのかなあ、と思う。そのままの品揃えなら、本はインテリアでしかなのかも、という印象。

一緒に行った友人は退屈そうで、早くこの建物から脱出してお茶でも飲みに行きたい様子。この本、この値段で買う?美しい洋書のなかから、笑える本を探してきたり。結局、わたしも手が出なくて、何も買えなかった。知的センスを磨きたい男の人のための本、女も同じように楽しめるので、興味のある方はぜひ行かれてみては。このぜいたくな場所がなくなってしまわない前に。


5月某日 所詮アングロマニア


話題のジョイ・ディヴィジョンの映画「コントロール」を見にいく。ジョン・レノンやボブ・ディランなど最近音楽映画の公開が目白押し。イアン・カーティス役の俳優がすごい。彼は「トレイン・スポッティング」にも出ていたようだが、ライブシーンはアフレコだと思っていたけど、エンドロールを見てびっくり、実際にパフォーマンスしたようだ。イギリス音楽が好きな人は一見の価値あり。全編モノクロで映像もとてもいい。わたしにも青春の映画。

ちょうど家に帰ると、去年からお手伝いさせてもらってた本「映画でわかるイギリス文化入門」が届いていた。所詮わたしはアングロマニア、今読んでいるところで、手前味噌だが、なんともおもしろい本。知ってそうで知らないイギリスの基本的知識も身につくが、入門書の域を越えているマニアックな本。きれいなスチールも散りばめられていて得感あり。わたしは、ファッションと音楽のトピックやコラム、ゴルチエが衣装担当したグリーナウエイの映画などについて執筆している。


5月某日 衝撃セーラー服おじさん


友人が招待されたということで、わたしも便乗して招待される幸運に恵まれ、心斎橋のクラブクアトロにフォールズというオクスフォード出身のバンドを見に出掛ける。期待の新人バンドという言葉は、連発されまくられ、「期待していいのかな新人」の意味にもはやなってしまってるような気がするが、フォールズはほんとにいい音出してる新しいバンドという感じがする。アフリカンビートとジャーマンミニマリズムみたいなものがうまく絡みながら、ヴォーカルはとてつもなくエモーショナル、わたしにはこの声(キュアのロバートスミスに似てる)がすべてを包んで、ブリットなバンドと言いたくなるのだった。平均年齢22歳で去年デビューしたばかり。

深夜のお笑い番組「あらびき団」で人気者となったセーラー服おじさん安穂野香がライブするフライヤーが目に入る。6月に同じクアトロにて。対バン「あぶらだこ」「WRENCH」「マゾンナ」となんだかすごいことになってるぞな面々。わたしはテレビ画面を直視できないのだが、目をつぶるとなんともせつない歌声でメロディアスなピアノを弾いているではないか。セーラー服おじさんは、この道キャリア15年以上で、中学校の元音楽教師、名古屋では路上パフォーマーととして有名な方なのだそうだ。調べてみたら、人間大學というレーベルからCDが出ていて売れ行き好調のよう。恐いものみたさで見に行くか、などと、学生にフライヤー見せながら、話をする。ヴィジュアル系と確かに呼べる、インパクト大。


5月某日 現代ファッションのテーマ


授業中に目が行くのは学生の顔でもなく服でもなく靴。わたしはこのクラスのコンバース率は?と、だいたい頭で換算しながら授業をしている、のを、学生は知らないだろう。靴を見ているといろんなことがわかる。ちなみにスニーカーのことをイギリスではトレイナーと言う。

コンバースはなぜこんなにポピュラーな人気を博しているのか。まず値段が他スニーカーブランドよりも2割くらい安い。定番のデザインがローカットとハイカットのみ、これは不動の人気であり、それに加えて毎年新しいデザインを出す試みも行っている。素材を革にしたり、ヒールつけてフェミニンにしたり、チェック柄やアニマル柄、靴紐やラインなどをアクセントにしてコンビ色にしたり。

コンバースの機能性はというと、靴底が薄くて冬や雨にも不向き、サイドのシールが甘くて小石が入ってきたりして海などのアウトドアに不向き、けれども薄い分軽いし、価格の安さと色のヴァリエーションが豊富で、着替えやすい(つまり、もう一足、となる)。

わたしはハリスツイードを使った限定版を大切にしているが、いまのハイカットで4代目。かつて読んだくらもちふさこの漫画で、コンバースの履き崩し方をチェックしてその男の子を好きになるという一コマを思い出している。

機能性とデザインはいついつまでもファッションのテーマだ。最近は来たるオリンピックに向けて、競泳用水着の話題がテレビをにぎわしている。イギリスのSpeedo社の水着が新記録を次々と生み出しているが、日本選手は契約上これを身につけられないというもの。

日本水泳協会が提携しているのは、アシックス、デサント、ミズノといずれも関西のスポーツメーカーだ。スピード社のものはシームレスな高機能素材。これに対抗できるものを性急に改良して製造することを求められているという。競技がプールに入って泳ぐ前から始まっているのがなんだか厳しいがおかしい。


5月某日 人生はキャバレエ!?


サーファーだった幼なじみに勧められて聞いたのはまだ十代半ば、隣に住んでた従兄が持ってたベスト盤をせしめて、いまだにずっと聞き続けているのが石川セリ嬢。嬢というにはすっかり大人の女性なのだが、理想の男性が井上陽水であり続けている友人に誘われ、ライブに行って来た。23年ぶりになるアルバムが出るらしく、公演もそれに関連したものか。場所はブルーノートが経営も名前も変わったビルボードライブ大阪。

わたしはヌヴォラというイタリアの避暑地ブランド(?)の黒いワンピースに、ニナリッチのアンティークのスカーフをアレンジして、髪を久々にアップにして、ブルーの石のアクセサリーで出掛けた。永遠の憧れの女性、石川セリの歌声を生で聞くのははじめて。できるだけエレガントに女性らしく?友人は土曜というのに仕事してたらしく、一足先に会場につきビールを飲んでいる。大好きなシェリーがメニューにあったので、わたしもそれを頂くことにし、早く会場に馴染みたい。

石川セリは何故かわたしには「さぼりミュージック」、学生の頃からカセットに音楽入れて、学校さぼるときの友にしていた。さぼる場所は、自転車で行ける、油のにおいがする、怪しい外人のいる、いまはなき荒廃したイメージの大阪港だった。彼女に関わるミュージシャンを含めて、わたしの音楽人生(耳)に大きな影響を与えてきたのだ。アルバムをせっせと集め、上記陽水好きの友人に貸したりして、洗脳もしてきたし、ずっと聞いてきた。

18世紀ロココ風のヘアスタイルであらわれたセリ嬢は、ラメラメの黒いミニドレスに、濃いピンク色の大きなリボンをあしらっている。可愛い。大病を患ったということで、足下がふらついているように思え、友人と顔を見合わせ「大丈夫か」、30分もしないうちにステージを去り、ムーラン・ルージュのダンサーよろしきピアニストが、そのステージを見事に埋める。まだ二曲?三曲しかしてへんやん。

セリ嬢は娘さんを連れて戻って来る。サテン地のオレンジでゴージャスなドレスに衣装替え。「ダンスはうまく踊れない」を歌われるが、歌詞がめあいまいなかんじ。あたしのほうが全部覚えてるやん、娘のコーラスは、アンコール時の「ムーンライトサーファー」では主ヴォーカルにいつのまにか変わってる…。ドラム、ギター、ベースともにテクニシャンなメンバーに支えられた良いステージ。ただ実物見れたことにわたしは喜びでいっぱいである。

1時間もしないうちに終ってしまったステージの後、わたしたちはなんとなく消化不良な感じもあって、北新地へ向かい、カラオケなどに興じてしまったのだった。わたしは石川セリになりたくて、セリ嬢が舞台で歌っていた曲以外も歌いまくる。谷川俊太郎の詩で武満徹作曲の歌とか一度生で聞いてみたかったなあ。最後はタパスバーに行って解散。エミ・エレオノーラが弾き語りしてた「人生は、キャバレエ、一度きり、遊ばなきゃ」を思い出しながら。


5月某日 雨の日の掘り出し物


在学時代は一度もいかなかったのだが、友人に誘われて、母校の女子大へ。この日は年に一度の「愛校バザー」、しかし朝からすごい雨。雨女なので雨降りに出掛けるのは慣れっこだが、中庭にテント出して店開きすることもあり、行くか迷う。晴雨開催らしく、雨の方がいっそう掘り出し物ありそう、という友人のメールで重い腰をあげる。

ヴォーリズの建築によるキャンパスは、何年ぶりかで出掛けてみると、あらためて美しいなあと思う。山の中に建物があるので、雨に濡れた木々のなかを息切らしながら坂道を登る。雨と緑が入り交じりとてもいいにおいがする。少し肌寒かったのでマッキントッシュの薄手のコートはちょうど良かった。贈答品を中心にした店舗エリアでは、中高生の在校生たちが、大声あげて商品を売っている。「後悔しても後の祭りですよ」という売り文句に笑う。なぜか「朝青龍」と書かれた湯呑みを勧められ、苦笑した。

ふだん使っているシャンプーKERASTASEの名前が入ったバスピローを発見。きれいなリボンのついたレースの袋に、やわらかくて白いタオル地で作られたバスピローが入っており、ファスナーが付いているので洗うこともできる。お揃いで白いキャンドルも入っている。しっかりした大箱に入っており、1200円の値札が付いている。高い。これは明らかに販促物だと思われるので、せめて500円にしてと交渉していたら、売り子さんが友人の知り合いだったので、「彼女、OGですよ」と言うてくれ、まけてもらった。

ウエッジウッドの食器とか、アールデコ風の洒落たランプとか結構いいもの売っている。その他、使い道ないのに衝動買いしたのが、スコットランド製の蝶ネクタイ。ボーイズ用なのだろう。きれいなタータンチェックにひかれて。その他ブローチ、イタリア土産っぽいレモンの石けんなどを買う。友人は、インスタントのラザニアや、どこで見つけて来たのか、野菜の水切り袋など台所関連の品を買っている。

アイスクリーム食べて、ポップコーン買おうか、というてる頃には、雨がやむ。バザーは終わりの鐘とともに終了。聖書の一節がキャンパス中に放送され、なつかしくてパイプオルガンのある礼拝堂へ入ってみる。そこは仄かに明るくて暖かかった。帰りはシェイクスピアズガーデンという小さな英国式庭園を見に行くと、紫色の大きな薔薇が野草のように咲いていた。毎日通っているときは嫌で嫌でしょうがなかった学校もたまに遊びに来るとなんとも風情のある空間と時間を体験できる。


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