« No.6 (2008年5月) | top | No.7 (2008年7月) »

アンファッショナブル・ファッション日記 2008年6月

No.6 (2008年6月)

6月某日 左岸に想う


イヴ・サンローラン死去のニュースが舞い込んでくる。新聞でも、テレビでも。わたしには、友人からのゴシップじみたメールで。

あらためてすごい人だったのだなあと思う反面、わたしにはエレガンスを追求する、保守的なデザイナーだったという印象を拭えないでいる。80年代半ば、わたしのはじめての(そして唯一の)持っていたサンローランは、黒いハイヒール、つまり靴だった。大学に入学した時に、母に買ってもらったはじめてのハイヒール。細いストラップがついていて、留め金にゴールドが施されている。スーツやパーティ・ドレスなどお洒落した時によく履いていた。

モンドリアンドレス、ブラックやピカソなどシュールレアリストたちとのコラボレーションで、60年代や70年代はアートとファッションを融合させたデザイナーとして知られた。やがて、プレタポルテでもその活躍の場を広げ、エスニカンなモチーフやサファリルックなどマスキュリンなフェミニニティを打ち出す。イブ・サンローラン・リヴ・ゴーシュ、という「左岸」を意味する言葉をブランド名である自分の名に加える。

左岸は、いうまでもなく、パリ中心部を東西に流れるセーヌ川左岸を意味する。ソルボンヌなど大学があり、68年の反体制運動はここから起こり、カフェなどから発信される新しい芸術や文学などの文化活動を牽引した。新しさ、革新性を象徴する場としての「リヴゴーシュ」。

フランス国外からの退廃性や反逆性がパリモードを席巻し、アンチ・エレガンスの意味も希薄なストリートのカジュアルスタイルが主流になるにつれて、サンローランという「デザイン」は、拡大化していくブランドビジネスのなかで形骸化していく。大切にしていた、わたしのただひとつのエレガンスは、たぶん今もどこかに直し込んでいる。きっとまだ履けるし、これからも大切な場面に取り出して、履き続けていこう。


6月某日 アンファッショナブルがいい


いよいよタスポ導入が関西エリアでもスタート。タスポとは、未成年者喫煙防止取り組みの一環としてはじまった、自販機で煙草を購入する際ICカードで成人しているかどうかを認証するシステムだ。申し込みも発行も無料だという煙草を買うためだけのいわば身分証明だが、ほんとうに皆この制度を利用するのだろうか。自販機で買わず、煙草屋で購入する人が増えそうな予感。わたしのまわりは喫煙者が多く、その動向がとりわけ気になる。コンビニも煙草屋として活躍しそうだというニュースも流れている。

このサイトでのプロフィールにも、男はスモーカーでギタリストがよろし、と長いこと載せてきたけど、それをおもしろがって抜粋されたりすることが多かったが、わたしは煙草は吸っても吸わなくてもどっちでもよいと思っていて、ただ神経質な嫌煙ブームだけはいただけないと思ってきた。おいしいお酒やいい音楽とともに、煙が生理的に苦手な人もいるから、マナーさえ守ればいい嗜好品ではと思っている。

いままで好きになった男の人はみな煙草を吸っていた。たまたまだとは思うが吸わない人とは続いたためしがない。不器用な恋愛がおわってしまったあと、その人のことが忘れられないと、その人が吸っていた煙草を買ってきてお香のようにして香りにひたってみることがよくあった。たとえばLambert & Butler, JSP, Peace Lights, Drum....おっさんくさいがなかなかいい煙だ。Marlboro, Lucky Strike, Golden Virginia....パッケージはいいのだが香りは好きになれないままのものもある。

わたしはノンスモーカーだが、煙草は嫌いではない。むしろ好きだと思う。男の人は身につけるアクセサリーが少ないから、眼鏡とか万年筆とか煙草とか、女とは違うアイテムで演出される、と思っている。お酒はアクセサリーにならないが、煙草の煙は十分なりうるのだ。今の時代、かなりアンファッショナブル?


6月某日 好きな店


いつまでも好きな店が同じ場所にあり続けるというだけで幸せなことだ。そこにいけば、いつでも自分を待っているような服があり、困ったときに出掛けたり、何もなくても出掛けると楽しい時間がある。

何かのファッション雑誌ではじめてみて、ペイジの白いスタイリングにひとめぼれ。自由が丘に店があるときから通っていたピークパフォーマンスが閉店するという。代官山に移ってからはあまりわたしも行けなくなっていた。

東京に行く時は必ずまとめ買い。ピークは服だけでなくアクセサリーもそろっていた。元々スウェーデンのスキーウエアメーカーだが、スポーティなのにカジュアルだけに終わらないところが好きだった。

季節のカタログが豪華でなによりの楽しみだった。マップに使ったり、ポストカードは必ず壁に貼っていた。スキーウエアメーカーとはいっても、ピークの服は夏も良かった。スポーツウェア感覚は、動きやすく、洗濯に強く、型くずれしにくく、発色が良い。

よく着ていたのは、鹿の子のピンク色半袖パーカー、赤とピンクとグレーのストライプの入った厚手のTシャツ。臙脂色のブルゾンは軽くて暖かくて雨風にも強い。パンツもスカートもセーターも着用しまくっていて、これからも大切に着ようと思う。


6月某日 私的神戸ミニツアー


妹が神戸に一泊滞在することになった。ひさしぶりに会う。我が家でウェルカムドリンクのあと、まずは南イタリアの味が楽しめるピッツェリアAzzurriへ連れて行きたい。予約の電話を入れようと思ったがすでに話し中。結局直接向かう。リーズナブルな価格で本格的なピザが食べられる。素材をいかした味で大ファンなのだがいつもいっぱいで結局待ち時間が1時間。名前を控えておいてもらい、席が空くまで神戸は山側をぶらぶら散歩。

やがて夜も更けてきたが、異人館の方へ行く途中にあるジャズのライブハウスBig Appleに目をやると、東京からピアニストの渋谷毅さんが来られている。ちょうど開演少し前で入ろうか迷う。ピザかピアノか。地下を降りるとカジュアルなピアノ演奏が聞こえてくる。5分くらい悩んだが、結局食欲に負けて、ピザを取ってしまった。さらに山側へ歩いて行くと、急に坂がきつくなって、ほとんど山登り状態。肌寒くなってくる。

北野町あたりは、異人館で有名だが夜はもちろん開いてないので真っ暗。しかし古い洋館のような造りのマンションやアパートなどが立ち並び、素敵な照明が窓から漏れ出ている。がんばって坂道を上れば海が遠くに見え、夜景もとてもきれいに見下ろせる。木々のいいにおいもする。都会からすぐ足をのばせるのに森林浴も楽しめる場所だ。

一時間程して店に戻ったが、まだ待たなければならないよう。焦げ目が香しく、白くてもちっとした生地の触感、たっぷりのハーブ、フレッシュなトマトソース、外のベンチに座ってメニューを見ながらいろいろと想像する。入れたのは9時。長い待ち時間を忘れる美味しさ。わたしたちは3種類のキノコのピザと生ハムとルッコラのピザを頼む。両方ともに薫製の水牛モッツアレラをのせてもらう。ワインでピザを待つ間に頼んだ3種類のオリーブもおいしい。


6月某日 私的神戸ミニツアー(続き)


一泊して朝、昨日妹が来る前に買っておいた、廃校になった小学校を利用してできた北野工房のまちに入っているパン屋Saint Michel の食パンでサンドウィッチを作る。トマトをスライスして、ベーコンを焼いたものをはさむ。黒こしょうと育てているバジルをちぎってのせ、薄くマヨネーズをぬったパンにはさんでできあがり。コーヒーをいれるのが得意な妹にコーヒーは頼むことにする。そのあいだにいい天気なのでたまった洗濯物を。

お昼頃から、町へ繰り出す。トアウェストにあるヨーロッパのアンティーク釦屋Rolloへ。妹は一人なら3時間くらいいたいところだといいながら、熱心に小さな釦を物色している。わたしはフランスのデッドストックの自分のイニシャルが刺繍されているリボンを買う。カットして縫い付けたりして使うようだ。すべてのイニシャルがそろっているわけではないので、見つけたことがうれしかった。

それから海側へ降りて、元町商店街へ。老舗のテーラーが並び、神戸ではじめてコーヒーを出したお茶屋なども並ぶ名店街。マシュマロの好きな妹のために、今話題のマシュマロ専門店、神戸マシュマロ浪漫へ行く。レモン、ストロベリー、ココア、抹茶など、果汁や本格的な材料を使ったマシュマロ。焼きマシュマロもおいしい。パッケージも可愛い。

さらに南へ、栄町から海岸通りへ。このあたりは個性的な雑貨店が立ち並び、潮風が感じられる明るい神戸らしい町で観光客も大勢。そんな雑貨店の中でも老舗に入るparamount on paradeへ。栄町ビルヂングというレトロなビルの1Fにある。このビルにある店はひとつひとつのスペースが小さな学校の教室みたいで、喫茶店、ギャラリー、洋服店と、楽しそうに階段を行ったり来たりして店のはしごをしている女子でいっぱい。

お腹はすかないがお茶が飲みたくなり、今年に入った頃からよく行っているバリスタもいるカフェAnthemへ。ビルの4Fにあり階段をせっせとのぼらねばならないが、のぼりきった後に広がる落ちついた空間が好きだ。古いオルガン、靴の絵、さまざまオブジェが素敵だ。多くのお客さんは遅いランチを食べていて店内はパスタのいいにおいがする。妹が好きな画家Andrew Yyethの画集が本棚に置かれており、中央の大きな木のテーブルに席を見つけて座り、本を広げて眺める。

こだわりのセレクションの古書と新刊書が家の本棚のように並んでいるvivo,va bookstoreへ。ここもビルの4F、そして細くて狭い急な階段。神戸出身の写真家の小さな個展をやっていて、新刊の写真集のプロモーションのようだ。船の設計図、詩とその英訳、写真の他にも工夫のこらされた素敵な写真集だった。大好きな本屋なのだが、妹はわたしが本屋へ来ると何時間も動かないのを知っているので「まきでお願いします」と小声で言う。

本屋を出るとお腹がすいてしょうがない。日曜日で競馬新聞と赤ペン持ったおじさんたちがWINS前にあふれている。いまのうちにとラーメン店に入る。店名は忘れたが、JR高架下にある何気なく入った店だが、なかなかおいしい。店内には芸能人のサインや取材記事などが壁に掲げられている。わたしはワンタン麺を妹はチャーシュー麺を食べる。食べたら早く出ないと、この小さな店におじさんたちが押し寄せてきそう。

心残りの釦を求めて、再びトアウェストへ。妹は青い小鳥の釦を選び、手作りでペンダントを作れるキットを買っている。最後は、オレンジピールのチョコレートがおいしいショコラティエLa Pierre Blancheへ。家への手土産にと買って妹に手渡す。マロングラッセやプルーンの赤ワイン漬け、ピスタチオのマカロンなどチョコレート以外にもお菓子がたくさんあり、チョコレート色のシックな内装で店内でお茶も飲めるおすすめのお店。

すっかり観光客気分でリフレッシュできた二日間。


6月某日 幸せになるための27のドレス


映画館でチケットを買うときに、思わず恥ずかしくて最後まで言えなかった邦題。オリジナルは、27dresses ー「27枚のドレス」なのに。この映画を見れば幸せになる方法がわかる、と錯覚してしまいそうになる?!どのような邦題を付けるかは、観客動員数の効果につながるから、とても重要だ。

日本の仲人とは少し違うのだが、イギリスやアメリカでは結婚式のときに花婿・花嫁介添人というのがいる。親しい友人であるケースが多く、ユニークなスピーチが期待される。

花婿介添人が主役だった『フォー・ウエディング』のアメリカ版という感じの映画。主役は花嫁介添人で、週末は掛け持ちするくらいに結婚式へ出掛ける予定が入っている。『プラダを着た悪魔』の脚本家など同じスタッフが手がけた映画ということで、主役は彼女の身につける衣装でもある。

彼女はいつも着替えている。そしてこれまで出た結婚式の衣装はすべて購入したものでストックされており、クローゼットの中はかさばるドレスでいっぱいなのだ。結婚というよりも、結婚式マニア、なのだ。

いわば裏方である彼女はなかなか主役になれない。自分が思いを寄せていた上司と、イタリアから帰って来たばかりの妹が恋に落ちてしまい、その結婚式をプロデュースすることになってしまった。堅物な姉と違い、妹は華やかで色っぽく、至極対照的だ。

28枚目のドレスは白いウエディングドレスになるのだろうか?女性にとっての結婚や結婚式、そしてウエディングドレス神話が、いつまでも根強いことを語っている映画。いつもサポート役の彼女が、結婚式の記事を書いている若いジャーナリストを好きになっていく途中の、会話のテンポや心の微妙な変化がうまく描かれている。きれいな衣装とともにアメリカの結婚式とは何かを楽しめる、痛快な映画。

でも、チケット買うとき、ちょっと恥ずかしいです。


« No.6 (2008年5月) | top | No.7 (2008年7月) »